日本には日本固有の淡水魚など珍しい魚が数多く存在します。学術上貴重で価値の高い種は国の「天然記念物」に指定され、保護や保存の対象となりますが、そんな珍しい魚類7選をご紹介しましょう。
地域を定めない指定の珍しい魚
地域を定めない指定とは、天然記念物に指定されている種全体をさし、生息している地域に関係なくその全てが保護の対象となることを意味します。
貴重な日本固有種でありながら絶滅の危機に瀕している種4選とは?
ミヤコタナゴ
コイ科タナゴ亜科に分類される日本固有種です。1974年に天然記念物に指定されました。体長は約6cmでタナゴの仲間の中では比較的小型の種です。
栃木県、埼玉県、千葉県、神奈川県など関東地方の一部に分布し、丘陵地、扇状地周辺にある、湧水を基礎とする稲作地帯に生息します。
こうした人と自然の関わり合いの中から生まれる環境で繁殖するということは珍しい生態と言えます。
しかしながら、かつては数多く見られた豊かな環境は河川工事などで失われ、ブラックバスなど天敵の侵入、移入種のタイリクバラタナゴとの競合、さらには密漁などによって減少しています。
イタセンパラ
出典:Wikipedia
ミヤコタナゴと同じくコイ科タナゴ亜科に分類されるイタセンパラは、体長約7〜8cm、最大約12cm以上になることもあるタナゴの仲間の中では比較的大型の種です。
日本固有種で、1974年に天然記念物に指定されました。濃尾平野、富山平野、淀川水系に分布し、流れがないか緩やかであり、水草が繁茂する小川や池沼などを好みます。
しかしながら、都市化による河川の水質悪化などで産卵床となる二枚貝類が減少してしまうなど、生息地は限定的で生息数も減少しています。
アユモドキ
出典:亀岡市
コイ目ドジョウ科に分類されるアユモドキは体長約15〜20cmの大きさです。日本固有種で1977年に天然記念物に指定されました。琵琶湖・淀川水系、岡山県の高梁川水系などに分布し、河川の中・下流域、水路などに生息します。
かつては食用とされ、琵琶湖で捕獲されることもあったようですが、河川の護岸工事、圃場整備などによって産卵場所など生息地が失われ、また、密漁やカワウやオオクチバスによる捕食なども原因となり、減少してしまいました。
ネコギギ
出典:水族館ふりーく
ナマズ目ギギ科に分類されるネコギギはオスは体長約13cm、メスは約10cmの大きさです。日本固有種であり、1977年に天然記念物に指定されました。
伊勢湾と三河湾に流入する河川に分布し、きれいな流水を好んで岸辺などの入り組んだ場所に生息します。しかしながら、水質の悪化や河川改修、さらに農業用水路の三面コンクリート化などによって生息域が減り、生息数の減少が心配されています。
一方、環境が良好なため、ネコギギが高密度で生息する三重県松阪市を流れる中村川は2011年に「中村川ネコギギ生息地」として天然記念物に指定されることになりました。
また、三重県教育委員会が保護を目的とした調査研究なども行っているそうです。
地域指定
地域指定とは、対象となる動植物などが分布する地域の中から学術的に興味深いなどの理由で特定の地域を指定し、その地に生息している個体を保護などの対象にするというものです。
そんな地域指定の天然記念物3選とは?
アラレガコ生息地(福井県)
出典:文化遺産オンライン
アラレガコはカジカ科に分類され、”カマキリ”という和名でも知られます。体長は約15cmで、エラぶたの骨の後端に4本のトゲがあり、背中が鉤状に曲がっているという特徴があります。
灰褐色をしていますが、背側には4つの黒褐色の横帯があり、腹面は白色です。
日本特有で本州、四国、九州にかけて分布し、福井県では九頭竜川などの河川に生息していますが、九頭竜川の個体は特に成長が良く大形という特徴があります。1935年に生息地が天然記念物に指定されました。
本願清水イトヨ生息地(福井県)
出典:文化遺産オンライン
トビウオ科に分類されるイトヨは背中に3本のトゲがあるのが特徴です。一生を淡水域で過ごす陸封型と一生のほとんどを海で過ごし、繁殖は河川などで行う降海型とに分けられますが、福井県には両方とも生息しています。
陸封型は体長約5cmで、降海型は体長約7〜8cmと陸封型よりやや大きいという特徴があります。陸封型は湧水池に生息しており、本願清水の生息地は1934年に天然記念物に指定されました。
近年、地下水位が低下することによって湧水の水枯が起こるため、保護の対策として地下水を汲み上げる処置が行われています。一方、降海型は沿海域で成長し、産卵のために川をさかのぼります。
魚取沼鉄魚生息地(宮城県)
出典:東北森林管理局
コイ科に分類されるテツギョは体長約15cmの大きさで、ヒレが長く、特に尾ヒレが長いのが特徴です。鉄色または鉄銹色をしており、美しいことでも知られています。
フナとキンギョの交配種とも考えられていましたが、近年の調査でフナの突然変異種と判明しました。
テツギョは全国の川や池などでもまれに見られることがありますが、宮城県の加美郡加美町の魚取沼ではテツギョが群れで生息しており、これは学術的にも大変貴重だとされ、1933年に生息地が天然記念物に指定されました。
天然記念物として指定されている日本の珍しい魚類7選をご紹介しましたが、これらの種以外に他にも様々な種が存在します。
残念ながら水質汚濁などによって絶滅が心配されているものも多いですが、これらの種を守っていくためにもまずは興味や関心を持ってみてはいかがでしょうか?