「全身が毛で覆われた、巨大な毒グモ」。タランチュラと聞けばまずそう連想される方が多いでしょう。たしかにタランチュラは全身が毛で覆われた巨大な毒グモです。
しかしその毒に人間を殺す力はなく、タランチュラに咬まれて命を落としたという事故はこれまでに一度もありません。
まずは何を置いてもその大きさや毒などの恐いイメージが先行してしまいがちなタランチュラですが、その生態をしっかりと理解すれば、とても素晴らしい鑑賞用ペットになるのです。そんなタランチュラについて、詳しくご説明します。
タランチュラの特徴とは?
哺乳類さえも捕食する大型グモであることの恐さ、毒を持つ生き物特有の妖しさが、却ってタランチュラの魅力になっていることは間違いありません。
そこに加えて種類の多さ、その色彩の美しさが、多くのコレクターの心をくすぐっています。タランチュラマニアともなれば、部屋の中に数えきれないほどのプラケースを積み上げ、飼育、鑑賞を楽しんでいます。
寿命
タランチュラはオスよりもメスのほうが長寿で15年から20年ほど生きます。一方オスは短命で、3年ほどしか生きません。
販売価格
バードイーターのグループに属する「チリアンコモン(通称ローズヘアー)」は3,000円から5,000円ほどで売られています。
チリアンコモンは「タランチュラの入門種」と呼ばれており、丈夫でおとなしく、そのうえ美しいというとても魅力的なタランチュラです。タランチュラはペットとしてはもとよりコレクション性も高く、希少種には驚くような価格がつけられています。
タランチュラの種類
タランチュラとはオオツチグモ科のクモの総称です。一口にタランチュラといっても、次の四つのグループに分類され、さらにその中に一つ一つの種類のクモがいます。
バードイーター
出典:ワイルドモンスター
南北アメリカ大陸に生息する、地表凄タランチュラの総称です。地表を徘徊し、鋭い牙で獲物を捕らえて暮らしています。
直訳すると「鳥食い」となるバードイーターの仲間には世界最大のクモであるゴライアスバードイーター(ルブロンオオツチグモ)がおり、愛好家の間で非常に人気があります。
このグループは他のグループのクモたちに比べると大人しい種類が多く、初心者向けであるといわれています。
しかしこのグループに属するクモの多くが腹部に刺激毛を持っており、程度の差こそあれ、うかつに触ると痒みや痛みを感じてしまうので注意が必要です。
ツリースパイダー
出典:ワイルドモンスター
樹上凄タランチュラの総称です。南アメリカとアジアに多く生息しています。長い脚を持ち派手な体色をしている種類が多く、非常に動きが速いことが特徴です。
巣を作る種類と巣を作らず物陰に隠れて暮らす種類がおり、巣を作る種類であっても日本のジョロウグモやコガネグモのように獲物を捕らえるための巣ではなく、あくまでも自分の寝床のための巣で、獲物の捕獲はその高速の移動と牙を使って行います。
バブーン
出典:ワイルドモンスター
アフリカ大陸に生息するタランチュラの総称です。地中凄で、土中に巣を作り、近くを獲物が通るといきなり姿を現し捕獲します。
他のグループのクモたちと比べると色彩的には地味な種類が多いですが、なかには鮮やかなオレンジ色の体を持つ種類もいます。非常に気性が荒く、外敵に対して体を起こし、牙を鳴らして威嚇行動をとります。
アースタイガー
出典:爬虫類専門店 ふくみず
アジアに生息する地中凄タランチュラの総称です。バブーンと同じように土中に巣を作る種類が多いですが、頻繁に徘徊し樹上の獲物まで狙う種類もいます。
タランチュラの飼育に必要なもの
飼育容器
タランチュラの飼育容器に求められる条件は「絶対に逃げ出されない」ことです。プラケースが最も適していますが、ツメがしっかりとかかる物を選ぶことが大切です。
プラケースの大きさはタランチュラの体の3倍以上の物がよいでしょう。
地表凄のバードイーター、地中凄のバブーン、アースタイガーの飼育にはプラケースにとくに高さは求められませんが、樹上凄のツリースパイダーの場合はある程度の高さがある物を使用します。
床材
細かいヤシガラと腐葉土をよく混ぜたものが適しています。腐葉土を購入する際は農薬が入っていない物を選ぶことが大切です。
シェルター
地表凄であるバードイーターの飼育に用います。爬虫類用のシェルターや、割った植木鉢で構いません。
シェルターが無くても飼育は可能ですが、バードイーターは地表を徘徊していないときは石や木が作る物陰に隠れているので、やはりシェルターを設置するほうが本来の暮らしに近づけてあげることができます。
また、タランチュラは隠れる際はかなり窮屈な状態を好むので、タランチュラの体がぴったり収まるくらいの大きさの物が適しています。
水入れ
タランチュラは水をたくさん飲みます。地表凄のバードイーター、地中凄のバブーン、アースタイガーには水入れを用意しましょう。
深さは全く必要ないので、爬虫類用の浅い餌皿を用いるとよいでしょう。これは皿自体に重さがあり、ひっくり返されるのを防止する意味でも適しています。
樹上凄のツリースパイダーには、プラケースの側面に霧吹きをして水を飲ませるので水入れは必要ありません。
パネルヒーター
フィルム状の加温器具です。タランチュラの好む温度は25~28℃です。夏はとくに温めてあげる必要はありませんが、冬はパネルヒーターを使って加温してあげます。
地表凄のバードイーター、地中凄のバブーン、アースタイガーにはプラケースの下、2分の1から3分の1ほどにあたるように敷き、樹上凄のツリースパイダーにはプラケースの側面または背面に貼り付けて使用します。
タランチュラの飼育方法
地表凄のバードイーター、地中凄のバブーン、アースタイガーの場合、プラケースに床材となる土を5cmほど敷き詰めます。その上に、バードイーターなら適当な場所にシェルターと水入れを置きます。
地中凄であるバブーンとアースタイガーは土を掘って好きなように巣を作るので、水入れだけを置きます。また、アースタイガーには好んで樹上を徘徊する種類もいるので、そのタイプを飼育する場合は流木などを入れてあげるとよいでしょう。
樹上凄のツリースパイダーは、プラケースの背面にコルクバーク(コルク樫の樹皮)を立て掛けておくと、巣を作ります。給餌は週に2回ほど、食べ残しをしない量を与えます。
これは、飼育を始めてからその個体がどのくらい餌を食べるのかを観察しながら、適量を決めていきます。
プラケースの掃除はそれほど頻繁に行う必要はありませんが、一つの目安としてタランチュラが脱皮をしたら、脱いだ皮にダニが発生するのを防ぐ意味を含め、掃除をするとよいでしょう。
プラケースを丸ごと掃除するとなるとタランチュラを移動させなければなりませんが、タランチュラを掴んだりすることなくちゃんと安全に移動させる方法があります。まずタランチュラが入る大きさのカップを用意します。
これはプリンの空き容器でもよいし、カットしたペットボトルの底部分でも大丈夫です。これをタランチュラに被せ、下から文房具の下敷きのような薄い板(できるだけ硬さのある物)を滑り込ませます。
この板とカップごとタランチュラを移動させ、その間にケースの掃除をします。
餌の与え方
野性下では、昆虫、小動物など食べられるものは何でも捕らえて食べています。
容易に手に入る餌といえば、コオロギ、デュビア(ゴキブリ)、冷凍マウスなどです。爬虫類専門店、熱帯魚店、インターネットで購入できます。
まとめ
タランチュラという生き物が、毒を持つ獰猛な捕食者で、恐ろしい大型グモであることは事実です。しかし飼育は容易で、鑑賞用ペットとして優れていることもまた事実です。
ぜひ一度、ショップへ足を運び、恐ろしくも美しいその姿をご覧になってみてはいかがでしょうか。