原始的で個性豊かな生き物たちの宝庫、マダガスカル島。そこに暮らすフリンジヘラオヤモリは、やはり原始的な姿をしており、個性豊かで魅力溢れる生き物です。そんなフリンジヘラオヤモリの生態、飼育方法、魅力を詳しくご説明します。
フリンジヘラオヤモリの特徴とは?
マダガスカル島東部の原生林に生息するヤモリで、ヘラオヤモリ属のなかの最大種です。
以前は「マダガスカルヘラオヤモリ」の名で呼ばれていましたが、最近ではマダガスカル島に生息する他のヘラオヤモリと特に区別するため「フリンジヘラオヤモリ」の名で呼ばれることが多くなっています。
大きさ・見た目
最大で全長30cmにもなるこのヤモリの特徴は、平たい頭部と飛び出したような大きな目、そして名前の由来となっているヘラ状の平たい尾と、背中側と腹部側の境目にずらりとぶら下がった小さなフリンジ(房飾り)です。
灰色をベースにした皮膚に褐色の斑紋が無数に散らばっており、この体色とフリンジによって樹木の幹に擬態しています。樹上棲、夜行性のヤモリで、昆虫や節足動物などを捕らえて暮らしています。
性格
出典:熱帯倶楽部
樹上凄のヤモリというと素早い生き物と思われがちですが、フリンジヘラオヤモリはエサを捕獲するときを除けば動きはとてもゆっくりしていて、ペットヤモリとして最もメジャーなヒョウモントカゲモドキのようにハンドリングを楽しむことができます。
平たい体と異様なほど大きな目はまるで地球外生物のようで、初めて見る人は驚くかもしれませんが、そんな外見に反してとても穏やかな性格であることは本種の大きな魅力です。
きっと、触れ合えば触れ合うほどその可愛さの虜になっていくことでしょう。
寿命
日本にコンスタントに輸入されるようになったのはごく最近のことで、そのうえ輸入される個体のほとんどが野生個体なので年齢の推測が難しく、飼育下でどれくらい生きるのかはっきりしたことはまだわかっていません。
ですが、ヤモリに限らず爬虫類は大型であればあるほど寿命が長い傾向があるので、他の種類のヤモリの寿命を参考に推測すると10年以上であることは間違いないと思われます。
ニューカレドニアに生息する世界最大のヤモリ、ツギオミカドヤモリ(最大全長42cm)の寿命は30年以上といわれているので、そこまではいかないにしても、大切に飼育すればきちんとそれに応えてくれるでしょう。
販売価格
現在より前の時期の、爬虫類の飼育がいわゆる「マニアックな趣味」といわれていたときは、驚くほど高価なヤモリでした。
現在では爬虫類専門店が増え、爬虫類イベントなども催されるようになり、様々な爬虫類がペットとして飼育されるようになりましたが、それでもフリンジヘラオヤモリは安価な部類には入らないヤモリです。
時期や個体の大きさによってかなりの幅がありますが、おおよそ30,000円から50,000円が目安になります。
フリンジヘラオヤモリの飼育に必要な物
(1)ケージ
爬虫類用のガラスケージが適しています。大型のヤモリなので、ある程度の広さと、また樹上凄のため高さが求められます。
幅45cm、奥行き45cm、高さ45cmのケージでも飼育は可能ですが、できればもうひとつ上の幅45cm、奥行き45cm、高さ60cmの物が望ましいでしょう。このサイズのケージなら終生飼育が可能です。
(2)床材
樹上凄のヤモリのため地面に下りることはほとんどありませんが、稀に地面にいる昆虫を狙って頭から飛び下りることがあります。
飼育する際はこのときに怪我をすることを防止するために、クッションの意味でヤシガラやミズゴケを厚めに敷いてあげるとよいでしょう。またヤシガラやミズゴケは保水力が高いため、高湿度を好む本種の床材に適しています。
(3)コルクバーク・流木
出典:爬ちゅ家
ケージの背面や側面にコルクバーク(コルク樫の樹皮)や流木を立て掛けると、よい隠れ家になります。また、原生林に生息するヤモリなので、人工プランツなどを使って小さな原生林を再現するのもおすすめです。
(4)パネルヒーター
フィルム状の加温器具です。ケージ内の温度は25~28℃に保つようにします。夏場はとくに必要ありませんが、冬にはパネルヒーターをケージの背面または側面に張り付けて加温してあげます。
(5)温度計・湿度計
温度計と湿度計をケージ内に設置し、数値が一目でわかるようにしておくことが大切です。専門メーカーから二つが一体になった物が販売されているので、これを用いると便利です。
フリンジヘラオヤモリの飼育方法
出典:リミックス
餌の与え方
生きたコオロギ、デュビア(ゴキブリ)などを与えます。慣れれば冷凍コオロギにも餌付きます。これらは全て、爬虫類店や熱帯魚店、インターネットで購入できます。
ベビーサイズからヤングサイズの頃は、毎日食べるだけ餌を与えます。一年ほど経ちアダルトサイズまで育ったら、給餌は三、四日に一度で大丈夫になります。
高湿度を好むヤモリなので、霧吹きを行い常時70%以上の湿度を保つようにします。あまり湿度が下がってしまうと脱皮不全などのトラブルが起こりやすくなってしまいます。
また本種のような樹上凄のヤモリは、水皿を置いてもそこから水を飲むことはほとんどなく、この霧吹きによってできた水滴がそのまま飲み水になります。
まとめ
フリンジヘラオヤモリの個性的な外見は、それだけで興味の対象になります。温度、湿度の維持は絶対条件ですが、それさえクリアすれば飼いやすい部類に入ります。
いざ飼育するとなれば部屋の中に小さなマダガスカルの原生林を作ることになり、それはインテリアとしても素晴らしいものになるでしょう。